電力会社の乗り換えは、固定費を下げる手段としてよく名前が挙がります。一方で「停電しやすくなるのでは」「何か裏があるのでは」という不安から、なかなか踏み切れないという声も少なくありません。結論からいうと、乗り換えそのものに大きな危険はありませんが、プランの選び方を間違えると電気代がかえって高くなる落とし穴はあります。心配しなくてよい点と、本当に注意すべき点を分けて整理しました。
乗り換えても変わらないこと
停電のリスクと電気の質は同じ
どの電力会社と契約しても、電気は今までと同じ送配電網(電線や電柱)を通って届きます。送配電網の管理や停電時の復旧作業は、契約先にかかわらず地域の送配電会社が一括して担っているため、新しい会社に変えたからといって停電が増えたり、復旧が遅くなったりすることはありません。電気の質も従来とまったく同じです。
原則として工事は不要、賃貸でも乗り換えできる
切り替えに必要なのは、検針を自動化するスマートメーターへの交換だけです。すでに多くの住宅で設置が済んでおり、未設置の場合も交換費用は原則かからず、作業は屋外のメーター部分のみです。停電は原則なく、設置状況によって必要になる場合でも5分程度の短時間で済みます。電気の契約は入居者が個別に結んでいるものなので、賃貸住宅でも基本的に大家さんの許可なく乗り換えられます。スマートメーターは退去時に元へ戻す必要もありません。
本当のデメリットと注意点
市場連動型プランは電気代が急騰することがある
もっとも注意したいのが、卸電力市場(JEPX)の取引価格に合わせて電気料金の単価が変わる「市場連動型プラン」です。市場価格が安い時期には電気代も下がる一方、需給がひっ迫すると単価が跳ね上がります。実際に2021年1月には市場価格が記録的に高騰し、市場連動型プランの電気代が普段の数倍に膨らんだ例がありました。料金が安定している固定単価型か、市場連動型かは契約前に必ず確認しておきたいポイントです。
解約金の有無は会社・プランごとに異なる
多くの電力会社では解約金を設定しておらず、いつでも無料で他社へ移れます。ただし一部のプランでは、契約期間内の解約や更新月以外の解約で解約金がかかる場合があります。金額や条件は会社によって異なるため、「今の契約をやめるとき」と「新しい契約をやめるとき」の両方について、解約金の有無を申し込み前に確かめておくと安心です。
燃料費調整額の上限の有無で値上がり耐性が変わる
電気料金には、燃料価格の変動を反映する「燃料費調整額」が含まれています。大手電力会社の従来型プラン(規制料金)にはこの調整額に上限が設けられていますが、自由料金のプランでは上限がないものが多く、燃料価格が大きく上がった局面では規制料金より高くなることがあります。2022年以降の燃料高では、この差で「乗り換えたら逆に高くなった」というケースが実際に起きました。上限の有無は料金表の細かい部分ですが、確認する価値があります。
オール電化の家は安易に乗り換えない
オール電化住宅で昔ながらの深夜割引プランを契約している場合は、特に慎重な判断が必要です。こうした旧型プランの多くはすでに新規受付を終了しており、一度解約すると同じ条件には二度と戻れないことがあります。また、新電力にはオール電化専用プランを用意していない会社も多く、一般向けプランに切り替えると夜間の単価が上がって総額では割高になりがちです。オール電化の方は、専用プランの有無と夜間単価を必ず比較してから決めてください。
高圧一括受電のマンションでは乗り換えできない
賃貸でも基本的に乗り換えは可能ですが、例外がマンション全体で電気をまとめて契約している「高圧一括受電」の物件です。この方式では各戸が個別に電力会社を選べません。検針票や請求書の発行元が管理会社や一括受電サービスの会社になっている場合はこの方式の可能性が高いので、まず確認してみてください。
会社の撤退・倒産がゼロではない
過去には燃料高騰の影響で事業撤退した新電力もありました。ただし契約先が撤退しても、すぐに電気が止まるわけではありません。事前に通知があり、切り替えまでの猶予期間が設けられるほか、切り替え先が見つからない場合でも大手電力の従来プランにいつでも申し込めるため、契約先を失って電気が止まる心配はまずありません。慌てる必要はありませんが、料金の安さだけでなく運営会社の安定感も選ぶ基準に入れておくと安心です。
失敗しないためのチェックリスト
申し込みボタンを押す前に、次の項目を確認しておけば大きな失敗はまず避けられます。
- 市場連動型プランではないか(固定単価か市場連動かを料金説明で確認)
- 燃料費調整額に上限があるか、ない場合は納得できるか
- 今の契約と新しい契約、それぞれの解約金の有無と条件
- オール電化の場合、専用プランがあるか・今の旧プランを手放してよいか
- 自宅が高圧一括受電の物件ではないか
- セット割やポイント還元を除いた素の電気料金で比較したか
| 項目 | 心配しなくてよいこと | 確認が必要なこと |
|---|---|---|
| 電気の供給 | 停電リスク・電気の質は不変 | 市場連動型かどうか |
| 費用 | 切り替え工事は原則無料 | 解約金・燃料費調整額の上限 |
| 住まい | 賃貸でも乗り換え可能 | 高圧一括受電は対象外 |
電気の乗り換えは、上の注意点さえ押さえれば申し込みはウェブで完結する、手間の少ない見直しです。電気代そのものを下げる工夫は電気代節約の記事一覧にまとめています。電気以外の固定費もあわせて見直したい方は物価高で見直したい暮らしの固定費と備え5選も参考にしてください。
