ローリングストックという言葉はよく聞くけれど、実際に何をどう回せばいいのかは意外と分かりにくいところがあります。仕組み自体はとてもシンプルで、特別な非常食を買い込む必要もありません。普段の買い物をほんの少し変えるだけで、気づけば家に1週間分の備えができている。それがローリングストックの目指すところです。
ローリングストックとは。「食べながら備える」備蓄法
ローリングストックとは、普段から食べている食品を少し多めに買い置きしておき、賞味期限の古いものから日常の食事で消費して、食べた分を買い足していく備蓄方法です。農林水産省の「災害時に備えた食品ストックガイド」でも、家庭備蓄の基本的な方法として紹介されています。
従来の備蓄との一番の違いは、非常食を押し入れに「しまい込む」のではなく、いつもの食材を「回しながら蓄える」点にあります。在庫が常に入れ替わるので賞味期限切れが起きにくく、災害時にも食べ慣れた味で過ごせます。乾パンを5年間放置して期限切れにした経験がある人ほど、相性のいいやり方です。
何日分必要?目安は「最低3日分、できれば1週間分」
農林水産省は、家庭での食品備蓄について「最低3日分、できれば1週間分×人数分」を推奨しています。大規模な災害では支援物資が3日以上届かないことが想定されるうえ、物流が止まればスーパーやコンビニで1週間ほど食品が手に入らない事態も起こりうるためです。
水は飲料用と調理用を合わせて1人1日3リットルが目安です。1週間分なら1人21リットル、2リットルのペットボトルで11本前後になります。また、電気やガスが止まった時のためにカセットコンロとボンベの備えも推奨されていて、ボンベは1人1週間あたり約6本が目安とされています。数字だけ見ると多く感じますが、ローリングストックなら一度に揃える必要はありません。まずは3日分から始めて、回しながら1週間分まで育てていけば十分です。備蓄全体の品目は防災備蓄の記事一覧でも紹介しています。
挫折しない始め方3ステップ
ステップ1。まず家にある食品を棚卸しする
最初にやることは買い物ではなく、いま家にあるものの確認です。米、乾麺、缶詰、レトルト、飲み物。キッチンの棚を見渡すと、実はすでに数日分の食料がある家庭がほとんどです。「うちは何をよく食べるか」「何日分が既にあるか」を把握すると、買い足すべきものだけが見えてきます。
ステップ2。いつもの買い物で少し多めに買う
棚卸しで足りなかったものを、普段の買い物のついでに1〜2個多めに買います。レトルトカレーをいつも2個買うなら4個にする、その程度で十分です。ここで大事なのは「災害用に特別なものを買う」のではなく、「普段食べているものを多めに持つ」こと。食べ慣れないものは結局消費されず、期限切れの原因になります。
ステップ3。古い順に食べて、食べた分を買い足す
あとは賞味期限の古いものから普段の食事で使い、減った分を次の買い物で補充するだけです。新しく買ったものは棚の奥へ、古いものは手前へ。この「手前から取って奥に補充する」配置にしておくと、何も考えなくても自然に古い順で消費できます。月に1回「備蓄を食べる日」を決めて、パックご飯と缶詰で夕食にしてみるのも、回転の習慣づけとして効果的です。
ローリングストックに向いている食品リスト
農林水産省のガイドでは、主食に偏らず、主菜や副菜も組み合わせることが勧められています。災害時の食事は炭水化物に偏りやすく、たんぱく質やビタミン不足から体調を崩しやすいためです。向いている食品の例を表にまとめました。
| 分類 | 食品の例 | ポイント |
|---|---|---|
| 主食 | 米・無洗米、パックご飯、乾麺、即席麺 | 毎日食べるものなので最も回しやすい |
| 主菜 | ツナ缶・サバ缶、レトルトカレー・牛丼の素 | 缶詰の賞味期限はおおむね3年、レトルトは1〜2年が目安 |
| 副菜 | 野菜の缶詰、のり・わかめ・ひじきなどの乾物、インスタントみそ汁 | 不足しがちなビタミンや食物繊維を補える |
| 果物・その他 | 果物の缶詰、ドライフルーツ、野菜ジュース、ロングライフ牛乳、お菓子 | 甘いものは非常時の気分転換にも役立つ |
| 飲料水 | ペットボトルの水 | 1人1日3リットル。麦茶や炭酸水を普段飲む人はそれも戦力に |
選ぶ基準はただひとつ、「普段の食事に出しても家族が喜んで食べるかどうか」です。おいしくないものは回転しません。
よくある失敗パターンと対策
買いすぎて管理しきれなくなる
張り切って何でも多めに買うと、種類が増えすぎて在庫を把握できなくなります。最初は「よく食べるもの5品目だけ」と範囲を絞るのがおすすめです。慣れてきたら品目を少しずつ増やしていけば、無理なく管理できます。
置き場所が決まらず、あちこちに散らばる
備蓄が台所、廊下、押し入れと分散すると、何がどれだけあるか分からなくなります。「備蓄はこの棚とこの箱だけ」と置き場所を固定して、中身が見えるケースにまとめておくと、在庫の把握も補充もぐっと楽になります。
気づいたら賞味期限が切れていた
期限切れの多くは「しまい込んで存在を忘れる」ことが原因です。対策は、日常の動線にある場所に置くことと、先ほどの「手前から取る」配置の徹底。それでも不安なら、買った時に期限を箱の外側にマジックで大きく書いておくと、開けなくても一目で分かります。
物価高の今こそ。安いときに買えるのが大きなメリット
ローリングストックには、防災以外にもうれしい効果があります。家に在庫がある状態を保つので、「なくなったから今日、定価で買う」必要がなくなり、特売日やまとめ買いのタイミングを選んで補充できることです。缶詰やレトルトのように値上がりが続く食品ほど、安い時に多めに買っておく効果は大きくなります。
食べる分だけ確実に消費するので食品ロスも出にくく、節約と備えを同時に進められる仕組みだと言えます。食費まわりの見直しは物価高で見直したい暮らしの固定費と備え5選でも取り上げているので、あわせて読んでみてください。まずは今夜、キッチンの棚卸しから。それがローリングストックの一歩目です。
